自研センターの指数に物申す

見積

 私たちいわゆる自動車の鈑金屋さんは一般的に見積を作るのに自研センターの指数を参考にしています。
前から思っていたのですが溶接してあるパネル交換の指数が割に合わない。
はっきり言うと少ないと感じてました。
これは私だけではなく同業者に聞くとほとんど同意見です。
ある程度は損保のアジャスターさんも理解している人もいて指数の変更はいい顔しないのですが全体的な時間で合わせるのが業界の暗黙の了解だったりします。

 ところが昨年ハイゼットの大きい追突事故(修理費100万オーバー)を修理することになりリアのフロアを交換することになりました。

 

損傷は上の状態です。

損傷部分を外して交換します。

見てわかるとうり結構な重労働です。
部品は2m近い木枠に入って送られてきました。
フロアにはバックパネルのインナーがすでに付いており左右のインナーフェンダーを切開しないと入りませんでした。
体感では3日くらいかかったと思います。
いざ作業が終わり指数を確認してみると驚きました指数の設定は2.7だったのです。


つまり3時間かからない作業ですよと設定されているわけです。
一時間半で外して一時間半でつけてくださいということです。
いくらなんでも少なすぎる・・・自研センターの作業員はジョジョのクレイジーダイヤモンドのスタンド使いなのでしょうか?もしくはドラえもんのタイム風呂敷でも使っているのでしょうか?
そんなことができるのはマンガの世界だけだ。
私は憤慨しながら工数で18に修正して請求しました。
指数を大幅に変更されたアジャスターは当然怒り狂って電話してきました。
私も譲るわけにはいかないのでお互いヒートアップしていきました。
しかし最終的には向こうが裁判をチラつかせてきたので大幅に譲歩することになってしまいました。

裁判になると最低1年以上かかり元請けやお客様にも影響が出てくるからです。

 この状況はダメだろう。

そんな思いが強く残りました。

そもそもの根本は自研センターの指数設定がおかしい。
また実際に作業する私たちの意見が反映されるシステムがない。

職人のプライドもあると思います。

指数で設定された時間でできない=未熟者という意識が設定された時間でできないと言いにくくしているのだと思います。
ただアメリカで発行されている見積のデーターブックであるミッチェルで設定されてる作業時間と比較しても自研センターの指数はめちゃくちゃ低い。

前提条件(リアバンパー脱着を含む含まない)の差がありますがミッチェルのBMWのリアフェンダ交換で25に設定されています。
一方で自研センターのフォレスターのリアフェンダ交換指数は7.2です。

できるだけ客観的に見ても自研センターの指数は低いと言わざるを得ません。
体感でもリアフェンダ交換は2日ほどかかると感じていました。
日本の大手損保は世界的な大企業です。

利益や株価を上げるための努力は企業の必然ですが大手損保クラスになると基礎技術の重要性を理解し大切にする姿勢も必要なのではないでしょうか。
たしかイギリスで損保の力が影響して自動車修理業者が激減して修理が追い付かなくなりそのためレンタカー費用が爆上がりしたとききました。
その轍を踏まないようにドイツでできたのがTUVだと記憶しています。
マンガや映画ネタをだしてしまいますが映画スパイダーマンの「大いなる力には大いなる責任がある」というのは名言だと思います。
明治維新以降資源もない日本が世界史に残る活躍をしたのは人の質と基礎技術があり、さらに蓄積し続けたからです。
実際に作業する人たちに相応の対価を与えにくい状況は私たちの業界だけではないと思いますが残念でなりません。

 話を戻しましょう。

 この状況を何とかするために何ができるのかそれからいつも頭の片隅で考えていました。

損保より自研センターと交渉した方がいいような気がする・・・過去にセンターピラーの実測を日車協が行い指数が削除されたことがあった記憶があります。

それには実測を行わなければならない。

日車協で実測データーを集めて自研センターに交渉してもらえないだろうかと悶々と思っていました。

 そんな思いを持ちながら日車協のオンラインフォーラムに参加していると司会の方々から実測データーを集めれば日車協にとって凄い財産になるとの発言がありました。

 非常にうれしかった。
まさに我が意を得たりという感じでした。
勢いあまってオンラインフォーラムに飛び入り出演してしまったほどです。
やはり実測データーはとるべきだと思いました。
今はカメラを使わなくてもドライブレコーダーを流用すれば長時間の映像が安定して撮れそうだと閃き早速試してみました。

 そうして作った映像データーをYouTubeにアップロードしたものがこちらです。

 結果を言うとムーブのリアフェンダ交換で10時間とホイルハウスアウタ交換で2時間の合計で12時間という結果になりました。

指数の設定はリアフェンダ交換6.2ホイルハウスアウタ交換が1.5です。

この結果ひとつで大騒ぎしようとは思いませんが同業者の多くはやっぱりなと言う感想が多いのではないでしょうか。

個人的にはもっと差があるんじゃないかと思っていました。

実測データは数が多いほどエビデンスとして有効になっていきます。

機会があればできるだけ多くの実測データをとりそれが今後の業界の改善につながれば良いなと思います。

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